筆写撮影

ファーウェイは本当に「悪の帝国」なのか…本社を訪れて確かめてみた

広大な敷地を歩いて見えてきたもの

いったいどんな会社なのか

まさに、「百聞は一見に如かず」だった――。

「スパイ企業」「悪の帝国」「中国共産党の手先」「人民解放軍の一機関」……。米トランプ政権は、周知のようにファーウェイ・テクノロジー(華為技術)に対して、多くの負のレッテルを貼って非難している。

はたして本当にそうなのだろうか?

ジャーナリストというのは、好奇心旺盛な天邪鬼だから、悪名が轟くほど、その実態を自分の目で確かめたくなってくる。

先週のこのコラムでも記したように、私が中国ウォッチャーになって丸30年になるが、中国という国ほど、偏見の目で見られがちな国はない。例えば日本人はよく「中国人は〇〇だ」というレッテルを貼るが、中国には世界最大14億もの個性的な人々が暮らしていて、考え方や生活様式も、極論するなら、14億通りある。とても一緒くたにくくれるものではない。

ファーウェイに関しては、ソフトバンクを始めとして、これまで日本の取引先3社の人から話を聞いていた。興味深いことに、3人ともほぼ同じことを言っていた。

「ファーウェイの製品は、安いし品質はいいし、おまけにサービスも素晴らしい。ただ中国企業なんですよね……」

この物言いは、「ファーウェイがどんな会社か」という問いと、「中国政府(もしくは中国共産党、人民解放軍など)との関係はどうなっているのか」という問いを、分けて考えねばならないことを示唆していた。

ともあれ、私はファーウェイに取材申請を出してみた。「日本記者団の『団体ツアー』ではなく、ファーウェイ本社内を『個人旅行』のように見せてもらえませんか」。

ファーウェイから回答を得るまでに、少し時間を要した。その間、5月16日にトランプ政権はファーウェイを、「エンティティ・リスト」(制裁対象リスト)に入れた。それによって世界中が大騒ぎになり、5月下旬になると、「グーグルがアンドロイド機能の供給を停止か」「日本でP30シリーズの新製品スマホの販売延期」……と、毎日ファーウェイ関連ニュースで溢れた。挙句の果てには「ファーウェイ倒産説」まで飛び交い始めた。

そんな中、ようやくファーウェイから許可が下りたのだった。

5万人の社員とその家族が暮らす「町」

私は5月末、香港を経由して、隣接する深圳にやって来た。

深圳は昨年、ついに香港のGDPを抜き、北京と上海に次ぐ中国第三の都市としての地位を確固たるものにした。1980年に最高実力者の鄧小平が、わずか人口3万人の漁村を、中国初の経済特区に指定したのが、この町の始まりだ。それから約40年、いまや郊外まで含めると、香港の2倍にあたる人口1400万人の巨大都市に変貌を遂げた。

私は昨年も深圳を訪れたが、100年前のニューヨークと現在のシリコンバレーを掛け合わせたような、一獲千金を狙って中国全土の若者たちが蝟集するエネルギッシュな先端都市だ。

 

街の中心部からタクシーに乗り、運転手に「ファーウェイの本社へ」と告げると、迷うことなく北に向かい、連れて行ってくれた。

投宿するのは、170以上の国・地域に散らばるファーウェイ社員たちが本社へ一時帰国した際に泊まるホテルだった。私は「ファーウェイの普通の社員の様子が見たい」との要望を出していた。だが、運転手が「迷うことなく」連れて行ってくれたのは、通称「坂田」(バンティエン)と呼ばれる地区までだった。

中国自慢の「高徳地図」(グーグルマップに相当)は、私が教えた住所を点で示していたが、その場所まで行っても、高層マンションが建ち並ぶ郊外の住宅街で、会社の宿舎らしきものは見当たらない。

はて、どういうことだろう? タクシーに乗ったまま、運転手とともに30分以上も延々と迷っているうちに、私は空恐ろしいことに気がついた。何と、東西南北、いま私の視界にあるものはすべて、ファーウェイの社宅だったのである。

緑に囲まれた広大な敷地の中に、高層タワーマンションが、計30棟も連なっていた。私はもう、5万人の社員とその家族が暮らす「ファーウェイ城下町」へ来ていたのだ。