photo by iStock

「しなやかな女性リーダー」という言葉こそが女性の活躍を阻んでいる

日本企業で女性管理職が増えない理由

「しなやか」で女性の行動が縛られる

女性活躍関連の(よく使われるこの単語はかなり不思議な表現である。正確には、女性が企業内昇進をしていくことに関連した)セミナーや研修や座談会やコメントで、「しなやか」という言葉がよく使われる。

「女性管理職のためのしなやかなビジネス戦略構築」「しなやかに、したたかに、産む、働くを手にいれていく」(両者ともセミナーの名前)「しなやかな女性リーダーになって欲しい」(経済団体座談会)など実に多い。正直、しなりすぎではないかと感じることもしばしばである。

マネジメントを担うであろう女性の行動を(主に男性が)評する言葉として、「しなやか」は大人気なのである。

しかし、組織論を研究しMBAの教室で女性の学生とも接している私の目には、この言葉は問題だらけであるように映る。なぜなら女性管理職を増やそうという目的に対して、逆効果を及ぼす可能性が極めて高いからである。

さらに言うと、この「しなやか」という言葉は、日本企業が女性管理職を増やそうとする際に陥りがちな落とし穴のありかを示しているとも考えられる。

それはひと言で言えば、企業側がよかれと思ってやっている施策や男性達の厚意が逆に女性達に生きにくさを与えており、結果として女性達が管理職昇進に消極的になる――というものだ。

「しなやか」問題を考えることで、日本で女性管理職育成があまりうまく行っていない理由の一端が見えてくるかもしれない。

 

息苦しいダブルバインド

まず、女性からの「しなやか」に対する反応はどうか。私が教えているMBAの教室では、「しなやか」は女性達からは頗る評判が悪い。「具体的に何をしたら良いのかわからない」「気持ちが悪い」などと散々な言われようである。

なぜだろうか。「しなやかな女性マネージャー」といった瞬間に、二つの拘束を女性達に課すからだ。

しなやかという言葉で表される行動は「女性色」が強い。その「女性色」は、解釈が幾通りかできる。柔軟であること、戦わない、受け流す、優美であること。仕事の場面で使われる「しなやか」は、細やかに気配りをして、戦わずに調整力の高い振る舞いを示す

戦う、意志を通す、強いリーダーシップといった言葉が意味するものとは対極にある。

しなやかな女性管理職になりなさい、といったその瞬間に無意識にその人のマネジメントスタイル、仕事の場面での振る舞い方を一つの方向で規定している。その女性が相手と真正面から戦い論破するのが得意であったとしても、戦わずに意見を調整し、上手に人を動かして目的を達成するマネジメントスタイルを求める。これが第一の拘束である。

次に仕事である以上、満足のいく結果を出すことが必ず求められる。これが第二の拘束である。

つまり、この二つの拘束によって、女性管理職は単に結果を出すだけに止まらず、その行動スタイルに暗黙の強制を課せられてしまう。周囲と調整をしながら細部に気配りをし、女性らしい優しさを保ちなお且つ結果をきちんとだせ、というダブルバインドの状況に陥る可能性が高いのである。

男性の管理職予備軍に対して、しなやかに振る舞えという種類のアドバイスはされないにもかかわらず、だ。

「しなやかに」と言った本人は大して深く考えて話しているのではあるまい。しかし女性達にとっては、最初から調整型を指示され、息が詰まるように包み込む。これが恐らく、しなやかという言葉に対して、多くの働く女性が持つ気持ち悪さの正体である。