Photo by iStock
# スポーツ # ビジネススキル

弱小チームを優勝に導いた、野村克也氏の「人を伸ばすミーティング」

「考える力」を身につける
データにもとづいた野球理論を駆使し、ヤクルト、阪神、楽天といった弱小球団を優勝に導いた、名将・野村克也。勝利の秘密は、みずから取っていた膨大な「メモ」にあるという。著書『』は、その「メモの極意」を初めて公開した一冊だ。監督時代、選手たちの「考える力」を育てるために、日夜ミーティングを行なっていた野村氏。話す内容は、野球に関することだけにとどまらなかった。一体、どんな内容だったのか? 本人が当時を振り返る。

話はメモを取りながら聞く

私が監督を務めたヤクルトスワローズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスは、いずれも当時は「弱小チーム」だった。

Photo by iStock

オファーがあった時のオーナーたちの言うことも、ほとんど同じだった。

「このチームを野村さんの力で強くしてください」

結果、ヤクルトでは日本一になることができたし、阪神と楽天では私の蒔いた種がその後開花し、阪神はリーグ優勝、楽天は日本一の栄冠に輝いた(いずれも監督が星野仙一というのは何の因果だろうか)。

どのチームも、私が監督に就任した直後は打力、走力、球威など「目に見える力」では他チームと比べて明らかに劣っていた。

この「目に見える力」を練習で鍛えていくのはもちろんなのだが、私が注力したのはそれ以外の「目に見えない力」を選手たちにつけさせることだった。

「目に見えない力」とは、簡単に言えば「考える力」である。配球や駆け引き、データ分析、さらには相手の心理を読む力。これらの力をつけることで、「弱者が強者に勝つ」ことが可能となる。

そこで、私は選手たちに「目に見えない力」をつけることにした。そのために用いた方法は「ミーティング」である。まずは春のキャンプで毎日ミーティングを行ない、選手たちに「野球とはこうやって考えてやるんだ」ということを伝え続けた。

 

プロ野球選手は、本も読まないような人間が結構多い。私のミーティングもただボーっと聞いているだけでは意味がないため、私は各選手にノートを持たせ、私の言うことの一言一句をメモさせるようにした。

ミーティングをしながら、私がホワイトボードに要点を書いていく。選手たちはそれをメモする。

ホワイトボードが文字でいっぱいになると、スタッフがホワイトボードをひっくり返し、何も書いていない裏面を表にする。私がそこに再び文字を書いているうちにスタッフは裏面の文字を消す、といった具合で約1時間のミーティングでは「メモを取る」ということを徹底した。

メモを取りながら話を聞くと集中力が増すので、聞き逃すことが少なくなるし、内容が頭に入ってきやすくなる。ヤクルト時代は、このやり方で選手たちの「考える力」を随分と伸ばすことができた。

逆に、変な気を遣ったばかりに失敗したのが阪神時代である。ヤクルト時代と同様、阪神でもミーティングを当然行なったが、私はあらかじめ1時間のミーティングの要点をまとめたプリントを用意した。

このプリントがいけなかった。私は「こうしたほうが理解が深まるだろう」と思ってやったことなのだが、メモなどせずとも目の前に私の言いたいことが書かれたプリントがあるわけだから、選手たちは話をしている私を見るのではなく、「早く終わらないかな」と自分の腕時計ばかりを見るという事態になってしまった。

-->