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がんと付き合い続けて14年生きた、樹木希林さんから学ぶこと

「がんでいいじゃない」、そう言われても……というあなたに

まるで病人に見えない

もしあなたや家族が医者に、がんの告知をされたらどう受け止めるだろうか。

いままで考えもしなかった「死」が、突如として目前に迫ってくる。なぜ自分なのか、もう手遅れだ、助かる方法はないのか、家族を遺して先に逝くのが心配だ。さまざまな思いがよぎり、人目もはばからず取り乱してしまうこともあるだろう。

がんに限らず、重い病気が原因で人生に楽しみや希望が見えなくなってしまったら、昨年9月に亡くなった女優の樹木希林さん(享年75)の生き方と言葉を参考にしてほしい。

希林さんは'04年に乳がんが発覚し、翌年に右乳房を全摘出する手術を受ける。ところが術後も、身体のあちこちにがんの転移が見つかった。

そして'13年、日本アカデミー賞授賞式で「全身がん」の状態であると公表する。女優としてハツラツと活動していた最中だけに、だれもが耳を疑った。

希林さんに面識のあった人たちは、重病を患っているはずの彼女が、以前と変わりなく気張らずに生きている姿を目の当たりにしている。

 

作家の下重暁子氏は、希林さんの生き方に「尊敬の気持ちを抱きます」と語った。

「長くがんとともに生きる日々を経て、単なる諦観ではなく、徐々に死を自分のなかに取り入れて、仲良くなってしまったような印象を持ちました。

'17年の10月、あるイベントで私は希林さんとお会いする機会がありました。そのときの希林さんは、『まったく波が立たない水面』のような人、という印象でした。

どういうことかというと、普通の人にはない『静けさ』が漂っていたんです。なぜそう感じたのかといえば、彼女の病に対する覚悟を感じたからでした。

映画の仕事があれば、治療を定期的に受けるのは難しくなる。そのなかで、単に延命するより役者として作品を遺す道を選んだ。そういう覚悟から醸し出された落ち着いた雰囲気が、私が感じた『静けさ』だったのだと思います」

役者として作品を遺すために、がんと「仲良く」なる。長い病との付き合いのなかでたどり着いた境地なのかもしれない。

だが希林さんは、乳がんになった直後から、自分の境遇を恨むどころか、むしろ「がんになってよかった」と周囲に語っていたという。耳を疑うようなひと言だが、いったいどういうことなのか。