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東京タワー開業以来60年続いたそば屋が静かに閉店した事情

「さつま」が見てきた昭和、平成の風景

昭和33(1958)年、東京タワーの開業以来、唯一タワー内で営業を続けてきた飲食店、そば店の「さつま」が60年の歴史に幕を下ろした。

高度成長期から昭和と平成を30年ずつ。東京のシンボルの食を支えてきた店はどんな風景を見てきたのか。

 

東京タワーにのぼったことがありますか?

昭和33(1958)年の開業から長らく東京のランドマークであり続け、昨年12月23日には開業60年、還暦を迎えた。来塔者はのべ1億8000万人を突破し、国民一人が1.5回は来塔した計算になる。おそらく多くの人が展望台からの景色を眺めた経験があるだろう。

昭和33(1958)年12月、開業当時の東京タワー(photo by gettyimages)

では、東京タワーで食事をしたことがあるだろうか?

これについて正確な数字は出ていないが、おそらく上記の数字の半分にも満たないのだろう。東京タワーは港区の中央部に位置し、少し足を伸ばせば、銀座、新橋、六本木、麻布と美食の街にアクセスできる。少なくとも日本人観光客に「東京タワーの中の飲食店は?」と質問しても、即答できる人は少数だろう。

実際、タワー内に入っている飲食店は現状、チェーン系ハンバーガーショップ、アイスクリーム店などが目立つ。昨年オープンした汁なし担々麺「金蠍(きんかつ)」には行列ができているが、特に近年は、ファストフードと流行メシがテナントに入る傾向があるようだ。

しかし、そんななかにあって異彩を放つ老舗がある。いや、あった、と書くべきか。

2階南側の手打ちそば「さつま」だ。

開業以来60年、ずっと残ってきた唯一無二の飲食店でもある。少し失礼な表現になってしまうかもしれないが、時代や趣向に左右されず、職人気質で客をもてなすオールドファッションの店だ。

タワー内テナントの循環について、株式会社東京タワーの広報担当者に聞いた。

「一概には言えませんが、平均は4~5年ぐらい。10年続けば長いほうですね。そのなかで60年とは、本当に愛されていた店舗だったのではないでしょうか」

味も店名が示すとおり薩摩風だ。たっぷりの鰹節、鯖節の削り節でとった出汁をベースに、鹿児島産の甘めの薄口醤油、みりん、砂糖で調整する。

ミシュランで星がもらえるような、決して洗練された味とは言えない。しかし、それを補うような温もりと懐かしさが丼や碗を満たす。

一番人気はカツ丼で、甘辛く煮付けたタマネギと揚げたてサクサクのカツ、白飯との相性は文句なし。味噌汁付きぶっかけそばセットは1080円。何よりもそのボリュームが嬉しい。

一番人気のカツ丼セット

「うちは観光客というよりも、地元のサラリーマンが通う店だったから。長く続けられたのもしれません。そういう方々が飽きない味を提供しないといけませんでしたから」

そう言って、店が持つ歴史と魅力を分析し、振り返ってくれたのは、2代目にして最後の女将・竹下慶子さんだ。

「さつま」の女将、竹下慶子さん