元経済ヤクザが地下情報から読み解く「米朝会談決裂の深層」

核と暴力とアンダーグラウンドと

歴史的な決裂で終わった米朝首脳会談。どちらが勝者だったのか、今後はどうなっていくのかに関して、多くの報道・分析がなされている。だが、アンダーグラウンドの世界に生きてきた私には、こうした勝負ごとにおいては白と黒がはっきりでるものではないと認識している。むしろ私は、両陣営のいくつかの発言の真意に強い興味を持っている。

そのきっかけとなったのは、石油ビジネスを通じて知り合った、暗黒街の住民からの助言だ。元経済ヤクザの私が知り得た事象を繋ぎ合わせて分析した結果は、トランプ、金正恩の両者には「立ち去る」という選択肢しか残されていなかったということだ。一つ一つ紐解いてみたい。

 

なぜ「待つ」のか

まず、私が強く興味を持ったのは、会見後のトランプ氏の一連の発言だ。次回会談は「合意していない」としながら、

「関係は続けたいし、続けるつもりだ」
「私は彼を信じ、彼の言葉を額面通りに受け取る」
「ただ席を立って去るというのではなく、握手を交わした。温かみがあった。しかし私たちはとても特別なことを成し遂げる立場にある」

と述べている。

「イエスかハイ」しか許さず、「ノー」の場合はさらに条件を厳しくして、再び「イエスかハイ」を迫るのがトランプ流外交術だ。ソフトブレグジットを模索していたイギリスの首相、テリーザ・メイ氏をハードブレグジットへと翻意させ、中国とのFTA(二国間貿易交渉)を模索していたカナダに、中国離反とUSMACA(米国・メキシコ・カナダ協定)入りを決断させるなど、数々のディールに成功している。

ところが、金正恩氏に対しては明らかに「懐柔」を試みている。次回が約束されていないということも合わせれば、「イエスかハイ」ではなく「待つ」という手段をトランプ氏は選んだ。国際舞台で、あのトランプ氏がこのような態度を見せたことに私は驚いた。

【PHOTO】gettyimages

この異例ともいえる変節の原因の一つは、トランプ氏と黒い社会との関係が影響しているのではないか、と私は見ている。

暗黒街から伝わるニュース

2018年6月12日にシンガポールで行われた、史上初の米朝首脳会談の翌日から、日本の暴力団が北朝鮮に向けて投資活動を開始したことは『元経済ヤクザが読み解く、新冷戦時代の「米朝関係」驚きの終着点 』https://lebaobab.info/articles/-/58139)で書いた通り。

経済未開の地の開発は、新たな金融市場が生まれるチャンスでもある。だが、はたして米朝の雪解けは持続的なものとなるのか――そんな疑いを持っていた私は、石油ビジネスを通じて知り合った、あるロシアン・マフィアに助言を求めることにした。

国際社会の裏の裏に通じたこのロシア人は、昨年の米朝首脳会談のあと、北朝鮮に開発投資を行ったのは日本の地下経済人たちだけではなかったことを私に告げ、「トランプ関係の企業がホテルとカジノ建設に動いている。そんな状況下で、トランプが北との関係を断つと思うかい?」と言った。