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歯学部・獣医学部でも実際にあった、口利きブローカーの話

どこまで広がっているのか…

今回、一つの事実を明らかにしておきたい。それは、いわゆる「不正入試」と言われるような、情実入試、金権入試、コネ入試という実態が、一部の医学部にとどまらず、医療界・教育界の大きな範囲に遍在している事実である。

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今回は、獣医学部と歯学部の口利きについて、“コネ入試ブローカー”から聞いた話を紹介しよう。

獣医学部入試での「口利き」

個人が特定されることを避けるため、ここでは大学名は明かせないが、私立大学獣医学部、歯学部の数校で、私の知っているブローカー(A氏)が、「働きかけ」を行なった事例がある。そのブローカーは、とある“予備校のオーナー”であり、医学部や歯学部、獣医学部等に、広いネットワークを持っていた。

その年、A氏は、獣医学部志望者の親からの委託を受け、首都圏に本部を持つX大学の獣医学部に対して、2人の学生(B君とC君)の入試での便宜を依頼していた。B君とC君は、補欠合格していた。そこで、寄付金の約束との見返りに、「補欠からの繰り上げ合格」を実行してもらうのである。

 

A氏によれば、獣医学部入試で便宜を図ってもらうためのお金は、「医学部よりはずっと安い」。具体的な金額については教えてくれなかったが、医学部の情実入試において必要な金額が数千万円、大学によっては1億とも言われるのを考えると、数百万から1千万は必要なのではないかと思う。

ただし獣医学部も、口利きで成績不良の学生を取ることは割に合わないから、合格最低点になんとか届く程度の学生で、かつ、大学にとって利益のある人脈をもつ相手からの依頼だけを慎重に受けることになる。補欠からの繰り上げ合格は最もやりやすい口利きと言える。

そして、A氏の言う通り、実際にB君とC君は、獣医学部に繰り上げ合格となった。その通知があったのは、3月も終盤に差し掛かり、他学部への進学か浪人かを覚悟し始める時期であった。

A氏は、医療系学部を持つ大学の理事長、学長クラスの人に直接アプローチする人脈作りのため、医学部で長い間役職を務めた、懇意の教授たちへの接待を手厚く行なっていた。

少なくとも事務局長(事務方トップ)クラスへのアプローチは必須で、入試課の職員やヒラの教授では話にならない。大学側のカウンターパートは、理事長、学長、学部長クラスの人間である。

こういったやり方は、ビジネスの世界での伝統的な仕事のとり方と同じである。A氏は、「どの大学でも学部でも、たいてい行ける(コネが効く)」と断言していた。

獣医学部は狭き門ゆえ倍率は数十倍

獣医学部は、従来から人気が非常に高い。1990年前後に、少女漫画『動物のお医者さん』(佐々木倫子・花とゆめコミックス)がヒットし、全国的にペットブームが到来すると、人気はさらに高まり、今もなお、入試倍率数十倍という大人気学部となっている。

加計学園が、なんとしても獣医学部を設置しようと奮闘したのは、獣医学部が非常に人気のある学部で、受験生への訴求力があるからだ。

さて、獣医師になるには、医師と同様、6年制の獣医学部を卒業し、国家試験に合格しなければならない。そこで、医学部同様、「大学入試=就職試験」という様相を呈することになる。ここに、口利きがはびこる理由が存在する。

獣医志望者に対して、その養成機関である獣医学部の入学定員は、圧倒的に少ない。国公立では、帯広畜産大学、北海道大学、東京大学、東京農工大学など11大学、私立大学は6大学しか存在しない。各大学の入学定員は、国公立大学で30名~40名ほど、私立大学で多くとも100名ほど。すべての入学定員を足しても1,000名ほどだ。

私立の獣医学部は、英語、数学、理科1科目の計3科目で受験できることもあって、異常なほどの倍率になる。息子・娘をどうしても獣医に、と願う親からの要望で、医学部の場合と同様の力学が働く。OB会、関連の医学部等の人脈なども、こういったネゴシエーションに関係している。

獣医学部は、学科試験がメインのため、面接試験や小論文試験のような、曖昧な点数操作がしにくい。それでも、大学側は、合格最低点や平均点といった全体の点数しか公表していないため、裏側での点数操作が可能になっている。