Photo by iStock
# 医療費 # 生命保険

あと1年生きるのにいくら使える?知られざる「いのちの値段」の基準

医療も「コスパ」重視の時代
人が1年生きるために使っていいお金は一体いくらか? そんなふうに「いのちの値段」を問われたら、あなたはどう答えるだろうか。
じつは医療経済の世界では、その目安が決まっている。新刊『』が発売2週間で3刷2万部と話題の現役医師・中山祐次郎氏が、「コスパ」を重視しつつある医療業界の現状を明かす。

「いのちの値段」はいくらか?

「いのちの値段」などという言葉を聞いて、ぎょっとした方も多いのではないかと思います。しかし、しぼみゆく経済の中で高齢社会を迎えた日本の医療において、この議論は欠かすことができません。

まずは、こんなたとえ話から始めましょう。

あなたは今70歳で、大腸がんにかかってしまった。 手術や放射線の治療はできないと言われ、選択肢は抗がん剤だけになった。抗がん剤の種類の中で、よく効くがすごく高価なものがあった。

Photo by iStock

この薬を使った同じ大腸がん患者さんのデータからは、あなたの寿命はおよそ1年半のところが2年に延びるそうだ。しかし、2年間ずっと使っていなければならず、1ヶ月当たり薬は100万円の値段がかかる。2年で2400万円だ。

そこで高額療養費制度という制度を使えば、あなたが支払うお金は1ヶ月に9万円で済む。これから生きられるだろう期間の2年だと216万円だ。

あなたの年収は350万円だが、蓄えが1000万円あり、2年で216万円ならなんとか払えそうだ。副作用もそれほどないと聞いている。

 

あなたならどうする?

──さて、あなたはどうしますか?

半年のいのちの延長を得る代わりに、あなたは216万円を支払わねばなりません。

この金額を払って頑張るか、薬は無しで治療をするか。

実際にこういうシーンは、私の外来で多々あります。薬の代金も、年収も貯蓄も非常にリアルな数字を出しました。もちろん最終的に治療を選択するのは患者さんなので、じっくり考えていただきます。そして、ほとんどの方は「この額であったらなんとか払ってでもその薬で治療をしたい」という選択をなさいます。

ここで、2400万円が216万円に値引きされていることに注目してください。実に91%もの値引きです。9割以上の値引きなんて、なかなかないですよね。

では値引きをしたのは誰でしょうか。そして、そのお金は誰が支払っているのでしょうか。

値引きは、「高額療養費制度」という制度に基づいて行われています。支払うのは「保険者」です。このケースでは、「保険者」が肩代わりするお金は、2400万−216万=2184万円です。かなりの高額になります。

「保険者」といわれてもピンと来ない方が多いかもしれません。これは、公的保険事業の運営者のことです。では、運営者の財源はどうなっているのでしょうか。実際には保険ごとに多少の違いがあり、年齢ごとにも異なっていますが、ざっくりいえば約3割は公費、それ以外は被保険者(保険に加入している人、つまり私たちのことです)が支払った保険料になります。

ですから、お金を払っているのは「日本に住む人々」ということになります。みんなで医療費を負担して、重い病気の人にかかるお金の負担をなるべく減らす、というのがこの保険の理念なのです。

先ほどの例で考えましょう。2年で2184万円が保険者によって肩代わりされました。

では、ここでもう一度、質問です。この額をみんなで負担してでも高額な治療を受けてもらうべきでしょうか?

こう尋ねると、多くの方が「みなで負担して、治療を受けてきてもらうべき」と答えるでしょう。

-->