突然1億円の請求が…「負債相続」故人の借金に苦しむ人が急増中

あなたは大丈夫と言えますか?
椎葉 基史 プロフィール

あまりの金額の大きさに驚いた翔子さんと敏弘さんが弘さんを問い詰めると、会社が経営不振に陥って3億円の負債を抱えて倒産、しかもその返済の目処が立たないというのです。

確かに現金200万円は受け取ったものの、会社とは無関係のはず。しかも、弘さんの保証人になったわけでもないのに、なぜこんなに多額の請求が自分たちのところに回って来たのか、翔子さんや敏弘さんは全くわけがわからない、という状況で、私の事務所をたずねていらっしゃいました。

その原因はすぐに判明します。実は、亡くなった父康夫さんが会社の借り入れの連帯保証人になっていたのです。連帯保証人の立場も資産と同様に相続されます。つまり、法定相続人への相続対象になるのです。

康夫さんの配偶者、つまり、弘さん、翔子さん、敏弘さんのお母さまはすでに他界されていて、しかも、誰一人相続放棄はしていないので、3人の子が1/3ずつ相続することが自動的に決まってしまったというわけなのです。

 

翔子さんも敏弘さんも、康夫さんが会社の連帯保証人になっている事実は全く知らなかったと言います。会社の経営にはノータッチだったとのことですし、それは致し方ないことだったのでしょう。

ただ、結論から言うと、このケースでは、相続放棄の申し立てを認めてもらうことができませんでした。それは、康夫さんの死後から3年という年月が過ぎていたから、が理由ではありません。

では、何が理由なのか。

それは、翔子さんと敏弘さんが、200万円を相続する手続きをすでに済ませていたからです。

つまり、何かを相続している時点で、「単純承認」を“積極的に”選択したと判断されます。何も手続きをせず3カ月が経過して自動的に単純承認だとみなされた場合とは雲泥の差が生じ、その時点では負債の存在を知りえなかったといくら主張しても、一度選択した単純承認を覆すことはほぼ不可能なのです。

「連帯保証人の立場」も相続の対象

このとおり、被相続人が誰かの(あるいは法人の)借金の連帯保証人になっていた場合、その立場も相続の対象になります。つまり、主債務者がなんらかの理由で借金の返済ができなくなった場合は、「連帯保証人の相続人」に返済の義務が生じるのです。

連帯保証人の立場、というのは目に見える借金ではないので、自分がそれを相続していたことはもちろん、そもそも、被相続人が誰かの(あるいは法人の)連帯保証人になっていた事実さえ知らなかったという人は珍しくありません。

そんな人のもとに、ある日突然、全く知らない赤の他人の借金の返済を求める請求書が届けば、パニックになるのは当然でしょう。