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田舎で「不倫」すると、知り合いだらけでデートもままならない現実

A子とB子の複雑な感情【19】

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第9試合「不倫」対決のAサイド。

今回のヒロインは、旦那様の転勤に伴い秋田に引っ越し、そこで不倫相手を見つけた専業主婦。逢瀬を楽しんでいるかと思いきや、田舎ならではの世間の狭さに苦労しているようです。

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この先25キロにコンビニ

私の生家は手作りっぽい電灯が立っているような山に続く坂道の途中、庭はそのまま崖に繋がって下には結構な幅の川が流れる、のどかというより結構激しい自然に囲まれているが、それでも神奈川県というのは、いくら喧騒を逃れて田舎へ向かってもなんとなく逃げ道がありそうなレベルからは抜け出せない。

 

以前、島根県の邑南町というところに取材に行った時(そもそも車じゃなければ、広島空港から広島駅までバスで行って、そこから長距離バスに乗り、さらに近くのインターからコミュニティバスに乗らないと町役場につかないので、さらっと取材に行ったと書くのは抵抗があるのだけど)、この先25キロにコンビニ、という看板を見て、なんとなく田舎というものの一端を把握した。

だから郊外とは言っても都内で育った彼女が、旦那の転勤に伴って東北のクソ田舎に行くと聞いた時、彼女の決断に素直にすごい!と感動すると同時に、いつまでもつことやらと訝しむ気持ちももちろんあった。

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そもそも、転勤の辞令が出た時には彼女は乳飲み子を抱えて、車の免許すら持っておらず、日々のストレスは、分かりやすく百貨店や青山のカフェで解消するような人だった。旦那と住む予定となっていた地域は秋田県の中では中心部と呼ばれるような場所の近くではあったものの、好意的に言って必要なもの以外は何もないところだった。

都会に住む私たちには信じがたいことだが、必要最低限の駅ビルや商店街やちょっとした飲食店があると、人は生きていけるらしい。引っ越してすぐは痒いところに何も届かないその街の素っ気なさに、覚悟はしていたものの少々面食らった彼女ではあったが、その地域で1位2位を争う高級マンションには、住戸の数だけ住んでいる人がいて、恐るべきことに、隣の主婦も下の階の女子高生も誰も、それほど不満があるような顔をしてはいなかった。

「結構綺麗な人とかが、フィットとか乗って駅前の量販店で服買ってたり、可愛い女学生がバス乗ってたり。ダサいイタリア料理屋にも割と小綺麗なカップルもいたし。それが普通って思った上で、その中で楽しいとか面白いとかいうことを作らないと、マジでここで生きていくのしんどいし、浮くと思った。とりあえずほとんどスーパーみたいなところで買ったパンツ履いてみたよね。意外と履き心地よくて、さすが日本」

女子特有の適応能力で、彼女は数ヵ月のうちに秋田の文法を習得し、人口減少のおかげですんなり入れた保育園ではママ友を作り、ネット通販で買ったダイアン・フォン・ファステンバーグのワンピを着てダサい中華料理屋でランチをしたり、ダサい美容院を紹介してもらって会員カードを作ったりするようになった。車の免許がないせいで、どうしても遠出するときや緊急の時にママ友に頼らざるを得ず、しかしそのおかげで普通より早くかなり親密な友達ができたと言っていた。

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中央線沿線出身の恋多き女

中央線沿いで育った彼女は、恋多き女だった。実家が新宿から30分程度にあるため、一人暮らしの経験はなかったが、男と付き合うたびに毎晩実家に帰るのは億劫になり、いつのまにか男の家にヘアアイロンや下着を持ち込み、半同棲状態になるのがお決まりのパターンだった。26歳で結婚する直前も、現在の旦那様の借りていたマンションを、ほぼ自分のもののように自由に使いこなし、私や他の友人を招くことすらあった。

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